待ったなし!中小企業の人手不足、DX化と省力化投資の重要性
2024年6月11日に政府から発表された「経済財政運営と改革の基本方針2024」(骨太の方針2024)では、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)を通じた生産性向上が引き続き重点事項とされています。生産年齢人口の減少が見込まれる中、実質1%を上回る経済成長率を確保するためにはDXは欠かせません。
<参考>経済財政運営と改革の基本方針2024|内閣府
特に中小企業においては、DX推進が生産性向上と人手不足の解消に大きく寄与することが期待されています。
しかし、多くの中小企業では、DX化が遅れており、「2025年の崖」への対応も進んでいません。
「2025年の崖」とは、経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」で提示されたキーワードです。この言葉は、DXを推進できないことで国際競争力を失い、2025年以降に大きな経済損失が発生する可能性を警告するものです。特に過去の技術や仕組みを使い続ける「レガシーシステム」が大きな課題とされています。
政府の方針が示すように、DX推進はもはや待ったなしの状況です。
ここでは、中小企業が直面する人手不足の現状と、その解決策としてのDXや省力化投資の重要性について考えてみます。
中小企業における人手不足の現状
2024年版中小企業白書・小規模企業白書(2024年5月閣議決定)によると、コロナ後の売上回復とともに人手不足が深刻化しています。これまで、女性や高齢者の就業が進んだものの、現在では就業者数の増加が頭打ちとなり、労働人口の供給余地が少なくなっています。このような状況下で、中小企業の生産性向上には省力化投資や単価引き上げが必要とされています。
単価の引き上げには取引先との合意が必要であり、一朝一夕には進まないことが多いです。しかし、省力化投資は自社で取り組むことができ、今すぐ実行可能な対応策です。
特に、規模の小さい企業ほど、省力化投資の進展が遅れており、取組み余地が大きいとされています。
中小企業白書のデータによると、省力化投資を実施した企業は売上高の増加が見られ、人手不足の緩和だけでなく、業績向上にも繋がることが期待されています。
出所:2024年版中小企業白書・小規模企業白書概要|中小企業庁
では、人材確保が出来ている企業ではどのような取り組みをしているのでしょうか?
働きやすい職場環境・制度の整備の取組みの実施が、人材確保に対し効果があることがデータで示されています。さらには、職場環境を整備した企業では従業員数の増加も見られます。
省力化投資を含めた職場環境・制度の整備が人手不足の解消には重要な要素であることが分かります。
出所:2024年版中小企業白書・小規模企業白書概要|中小企業庁
広がる「DX離職」
2024年6⽉に全国の会社経営者・役員・正社員・契約社員・公務員1,000名を対象に株式会社Colorkrewが行った「2024年 働き⽅に関するアンケート調査」によると、約3人に1人が「DX離職」を考えるという調査結果が出ています。
「DX離職」とは企業のDX化が進まないことによって人材が企業から離れていってしまうことを指します。
この傾向は、特にデジタル化への対応が早い若年層に顕著で、DXが遅れると人材流出の恐れがあることが明らかとなりました。
また、会社に求めるDXはどのようなものかとの質問には「データやデジタル技術を活⽤して、より効率のよい業務プロセスへ改善されること(23.9%)」が、最も⾼い結果となりました。
しかし、2024年版の中小企業白書で示された通り、省力化投資に取り組む中小企業は少なくDX化が遅れているのが現状です。
<参考>DX離職調査|株式会社Colorkrew
DXはデジタル技術を使って企業全体のビジネスモデルや業務プロセスを根本的に変革し、新しい価値を創造する戦略です。
一方、省力化投資は具体的な効率化の取り組みであり、WEB・IT関連ソフトやシステムの導入、RPAやロボットによるサポートや自動化などでコスト削減や業務改善と生産性向上を目指します。
企業のDX化を進めるためには省力化投資は欠かせません。省力化投資を行いDXを推進していくことで、中小企業が直面する人手不足の課題にも有効な手段となります。
「2025年の崖」問題への対応も迫られる中、中小企業にとって省力化投資に取り組む余地は大きく、経営戦略においてDX推進は待ったなしの状況です。